それいゆ文庫
それいゆ文庫の作品 37 件
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秘密。そして、それから
泉住怜那 セカイメグル
こんなことがバレたら、僕たちは今までのままではいられない、きっと。誰にも言えない秘密を抱える三人の男女の青春模様。
新型コロナウイルスが蔓延しはじめた春。高校三年に進級した吉良は、始業式の日だけ登校したものの、すぐに休校。4月7日に緊急事態宣言が発出されたその夜、いつも帰宅の遅い父親が珍しく早く帰ってきて、久しぶりに家族五人で食卓を囲むことに。明日からリモートワークになるのだそうだ。父に家にいられると級友の利喜の家に遊びにいきづらくなると考えた吉良は、リモートワークについて、つい父にいろいろ尋ねてしまった。食事を終えると、疲れた顔をした父親に仕事の話をするものじゃないと兄から窘められた吉良。だが……父さん、どんな顔をしてたっけ? 父親がどんな顔だったのか、思い出せない。たった今、自分の目の前から去った兄の顔さえも。これまで自分は他人に興味がないだけなのだと思っていた。でもどうやらそうではないらしい。これはもしかしたら何か大変な病気なのかもしれない。オンライン授業も違和感だらけで不安になる。検索サイトで調べてみると、ヒットしたのは「相貌失認」というキーワード――。 -
蟲毒のルパン、寺の刑事 ~警視庁盗品特別管理課~
加賀見彰 白皙
幼馴染だったはずの千手と響。だが、響は千手を裏切った。やがて成長した二人は、刑事と窃盗団の総帥の息子として対峙する――
宗教絡みの犯罪の増加に伴い、警視総監の一存で設置された特命課・盗品特別管理課は、警視庁の誰もが認める閑職の部署。配属されたのは、寺の息子の千手のほか、神社の息子、新興宗教の教祖の息子の三人の刑事。発足以来仕事といえる仕事もなく、日々『お茶会』をしながらヒマをつぶしている。そんなある日、千手は幼馴染でもあり一課の刑事でもある健介に声をかけられた。病弱だった千手と、ガキ大将タイプだった健介。見た目も性格も正反対の二人だが、千手が唯一気軽に話せる相手でもあった。軽口をたたき合ううち、健介が一枚の仏像の写真を取りだした。一目でそれを騨拝奥元郷寺の虚空菩薩像と見抜いた千手は、健介から殺された六本木の貿易商のコレクションルームにあったものだと教えられる。なぜそんなところに虚空菩薩像が……? 健介からの情報に違和感を覚えた千手は、さっそく騨拝奥元郷寺に向かった。だが、途中で不良グループに襲われてしまう。失いかけた意識の中で千手は、かつて千手の初めての友達だった響が自分を裏切り、寺の千手観音像をすり替えたことを思い出していた…… -
平安なずな陰陽譚 ~お困り姫を癒す庶民ごはん~
桔梗楓 鈴ノ助
安倍晴明に見出され、なずなと名付けられた少女。陰陽術と野山育ちの創意工夫で華やかな貴族社会に巣食う闇に挑む!
平安京の秩序を司る陰陽道、その権威・安倍晴明は、山中で怨霊と対決し負傷したところを謎の少女に助けられる。野生児だが聡明な少女は「なずな」と名付けられ、晴明に育てられて陰陽師見習となった。初仕事は、橘大納言邸に見え隠れする不吉な影を探ること。緊張の面持ちで向かった大納言の屋敷で、一人娘の桜子姫付女房を命じられたなずな。先輩女房の浄梅に連れられ挨拶に上がる途中、なずなは、湯あみの水が熱すぎるとわめき散らしながら、世話をしていた女房に湯を浴びせ、桶を投げつけようとする桜子姫の姿を目の当たりにする。女房を庇うなずなの頭に桶がぶつかっても、桜子姫は悪びれもしない。浄梅の作った氷菓を、遅いと言って投げ捨てる。噂には聞いていたものの、桜子姫の気性の激しさを目の当たりにしたなずなはげんなり。しかしだからといって、桜子姫に怨霊が取り憑いているというわけでもなさそうである。木登り禁止、虫を摘まんで食べることも禁止、と申し渡されてきた元野生児のなずなが、都人の生活に不自由を感じながら晴明のいう『凶の兆し』を探っていく―― -
一角瑞獣のいるスコーン店 ~人見知りの店長は神の使いに守られています~
朝陽ゆりね はせがわLino
御厨恵璃、25歳。スコーン店店長。コミュ障系女子。ボディガードは平安系もののけ。額から角が生えている。
恵璃(めぐり)の前に珍しく姿を見せた義兄。結婚報告かと思いきや、これを機に縁を切ろうと言い出した。
さらには、恵璃が営む住宅兼店舗のスコーン店を更地にして売るという。事業に失敗した義兄には、まとまった金が必要だったのだ。
コミュ障気味の恵璃は、誰にも相談できぬまま、新しい住まいと新店の準備もひとりで対応し、『スコーン専門店 クロテッドクリーム』移転の目途も立ってきた。
そして引っ越し前日、恵璃は15年間住んだこの家を目に焼き付けようと、全ての部屋を見て回った。
幼いころから手を合わせた、敷地の片隅にある祠にも別れを告げようと足を向ける。すると、祠の後ろに鍵穴があることに気づく。
もしや、と義父から預かった鍵を差し込んでみたものの、恵璃は過って祠を壊してしまった。
台座の中央に残った小箱だけが無事で、家に持ち帰って開いてみる。そして中の勾玉を手に取ってみると、30歳前後の体の透けた男性が現れたのだった。
いや、でも、まるで平安貴族か陰陽師のようないでたち、しかも額から角が生えている……!? -
憑かれた僕らはワケあり物件に癒されたい ~足立不動産「沈められたファイル」~
榎木ユウ 文月マロ
古びた商店街に店を構える足立不動産は、不思議と客足が絶えることがない。今日もまた一人、悩みを抱えた客が訪れる。
宙が勤める足立不動産の社長が亡くなった。新たに社長に就任したのは、先代の孫でまだ二十代の櫂。葬儀で初めて会った時は笑顔の素敵なイケメンだと思っていたのだが、初七日を終えてからはまるで鬼。お茶汲みと掃除くらいしか取り柄のない宙は、櫂からポンコツ呼ばわりされている。ある日、睡眠障害がひどくて朝起きられないと訴える客がやってきた。カウンセラー運上の紹介だと聞いた櫂が、事務所の奥から持ち出してきたのは……『沈められたファイル』!? げ! 思わず声が出てしまった宙。幸い、客には聞かれなかったようだが、そこに収録されているのは瑕疵物件。櫂は、堂々と心理的瑕疵物件であることを明かしたうえで、客にあるアパートを勧めるのだった―― -
箱庭の歳時記 ~この人を、愛そうと、決めた~
砂川雨路 カトーナオ
父を亡くし、天涯孤独となったいばらを引き取って夫となった扇唯一。だが23歳年上の夫が父の話をする時、いばらの胸は微かに疼く・・・・・・。
大晦日の昼下がり。高校生の扇いばらは、温かなマンションのダイニングであんこ作りに取りかかっていた。ザルに小豆をあけ、さっと水洗いする。手で豆を掻くと、ジャキジャキと小気味好い音が響く。これを雪平鍋に移し、たっぷり水を入れて、ガスコンロの火をつけて煮込む。高校の先輩たちに初詣に誘われたいばらだったが、保護者の同伴なしに深夜に外出するのは駄目だと、夫の唯一に止められた。沸騰してきた鍋を流しに運び、小豆をザルにあけた。いばらにとっては、初めて経験する日本のお正月になるはずで、すべてが新鮮だった。長くイギリスで暮らしてきたいばらは、日本の文化や行事をよく知らない。幼い頃に母と死に別れ、4か月前に父も亡くしたいばらを迎えにきたのが、父の大学の後輩の唯一だった。23歳年上の唯一と結婚して日本で暮らすことになったのだ。玄関の開く音がする。唯一が帰ってきた。「おかえりなさいませ、あなた」。棒読みの挨拶。唯一は「それ、やめなさい」と嫌がるが、いばらは夫婦らしいやりとりというものを試してみるのが好きだった。いばらと唯一、二人は秘密を抱えている―― -
僕たちの祈りの言葉 ~神職見習い水島華山、千年伝説に挑む~
アドウマドカ spike
石之守家の者は、56歳になると死ぬ。1000年前に交わしたという「覚書」の謎に、世代を超えた三人が迫る壮大なファンタジー。
石之守家の者は、56歳になると死ぬ。例外なく死ぬ。村の大地主で石之守酒造の社長・石之守清はまもなく56歳になろうとしている。清を助けたいと行動を起こしたのは、代々緑王神社で宮司を務めてきた家の一人息子で、まだ高校生の水島華山と、幼馴染みの長谷川泉子だった。世代を超えた三人の奇妙な友情。神職見習いの華山は祈りを込めて祝詞を上げ、泉子は願掛けをして、何とか清の命を永らえようとしているが、石之守村では1000年前の神との約束がまだ続いている。泉子が時折口にする「太古の記憶」とは?
石田衣良と「裏」名著を味わう文学サロン「もっとも危ない読書会」主催第5回ショートショートコンテスト石田衣良賞受賞作「直葬のオラトリオ」を元に加筆修正した表題作と、三人のその後を描く連作。