憑かれた僕らはワケあり物件に癒されたい ~足立不動産「沈められたファイル」~
榎木ユウ
文月マロ
ラノベ
古びた商店街に店を構える足立不動産は、不思議と客足が絶えることがない。今日もまた一人、悩みを抱えた客が訪れる。
宙が勤める足立不動産の社長が亡くなった。新たに社長に就任したのは、先代の孫でまだ二十代の櫂。葬儀で初めて会った時は笑顔の素敵なイケメンだと思っていたのだが、初七日を終えてからはまるで鬼。お茶汲みと掃除くらいしか取り柄のない宙は、櫂からポンコツ呼ばわりされている。ある日、睡眠障害がひどくて朝起きられないと訴える客がやってきた。カウンセラー運上の紹介だと聞いた櫂が、事務所の奥から持ち出してきたのは……『沈められたファイル』!? げ! 思わず声が出てしまった宙。幸い、客には聞かれなかったようだが、そこに収録されているのは瑕疵物件。櫂は、堂々と心理的瑕疵物件であることを明かしたうえで、客にあるアパートを勧めるのだった――